JOY TO WORKS MAGAZINE
ウェブマガジン

%で知る、しごとのリアル

ハタラク/パーセント

第5回|「残業時間が月45時間を超える人 12.5%」
負担は一部に集中? 中小企業に偏る“見えないリスク”



「はたらく%」は、働き方や職場のリアルを“数字”で切り取る連載企画です。
統計や調査データをきっかけに、数字の裏にある人や企業のストーリーを読み解きます。
無機質な数字の中にも、誰かの悩みや工夫、喜びがあります。数字を知ることで、自分の働き方や職場を少し見直すきっかけになれば——そんな思いでお届けします。
「45時間超」は“例外扱い”のはずなのに
厚生労働省「労働時間等実態調査」(2022年)によれば、1か月の残業時間が45時間を超える労働者は全体の12.5%にのぼります。
「月45時間」という数字は、労働基準法で定められた原則的な上限。これを超える働かせ方は本来“例外”のはずです。

ところが現実には、この“例外”が日常と化しています。しかも大企業よりも中小企業に多く偏っている。いわゆる「ブラック体質は大企業に多い」というイメージとは逆の、意外な実態です。
中小企業に残業が集中する理由
なぜ中小企業に残業が集中するのか。背景には複数の要因が絡み合っています。

少人数で回すため「この人にしかできない仕事」が多い。慢性的な採用難で、どうしても残業でしのぐしかない。大企業のように勤怠管理システムを厳格に導入する余裕もなく、労務管理が自己申告に依存しやすい。

つまり「経営者が努力していないから」だけでは説明できません。もちろん経営判断の甘さもありますが、現実には限られた人員と資金のなかで、なんとか事業を続けるために残業に頼らざるを得ない構造があるのです。
企業も努力している、でも追いつかない
多くの企業は残業削減に向けて、勤怠管理システムの導入や外部人材の活用、業務のマニュアル化などに取り組んでいます。
ただ、コストやノウハウの壁に阻まれ、思うような成果につながっていないのが実情です。

「だったら結局このまま続くのでは」と思ってしまうかもしれません。けれども実際には、多くの企業が残業削減に取り組み続けています。ちゃんと理由があります。

🙅 長時間残業が続けば人材は疲弊し、辞めてしまう。
🙅 優秀な人材が流出すれば、採用・教育コストが膨らみ、企業体力がさらに削られる。
🙆 一方で残業削減に成功すれば、採用力が上がり、社員の定着率が改善し、生産性も底上げされる。


たしかに中小企業にとって「なんとか回している」現状を変えることは、短期視点でのリスクではあります。しかし中長期的な視点では、残業を減らすことこそが競争力を高めるための最も確実は投資なのです。だからこそ、多くの企業がもがき苦しみながらも改善に取り組んでいるのです。
働く人にもできること
とはいえ、改善のスピードを企業任せにしていては現場は変わりません。働く人自身も「属人化を減らす工夫」や「早めの相談」「部分的な協力依頼」など、小さな行動で残業の偏りをやわらげることができます。

SNSでは「自分しかできない業務だから残業せざるを得ない」「実際は60時間以上働いても“45時間以内”と記録している」という声が散見されます。
また、労働相談系の記事では、人手不足による業務集中が体調不良や退職につながるリスクが指摘されています(ツギノバ「一人休むと会社が回らない会社は辞めるべき?」)。

こうした声が示すように、現場の負担はすでに限界を迎えています。だからこそ「声を上げる」「分け合う」ことが、改善を後押しする大切なステップになるのです。
JOY TO WORKS流の「残業との付き合い方」
残業は「多すぎて悪い」「ゼロが理想」といった単純な二択では語れません。重要なのは、企業と働く人の双方が「健全なライン」を共有することです。

優先度をつける:残業してでもやるべき仕事と、切り捨ててもよい仕事を整理する。

助けを呼ぶ先を広げる:社内外の人材やコミュニティに委ねることで、属人化を防ぎ負担を分散する。

健全なラインを共有する:「ゼロ残業」にも「過剰残業」にもリスクがある。どこまでなら無理なく働けるか、企業と働く人が共に把握して調整する。
12.5%が問いかけるもの
「残業が45時間を超える人が12.5%いる」という数字の背景には、企業の努力が追いつかない現実と、働く人に集中する負担の両方があります。

だからこそ解決のカギは、一方的な断罪ではなく「残業を減らすことは互いの利益につながる」という共通認識を持てるかどうかです。
残業を減らす努力はコストではなく未来への投資。雇う側と雇われる側がその意識を共有できるとき、12.5%という数字は“変わらない現実”ではなく“変化の出発点”になるはずです。
JOY TO WORKS MAGAZINE
ウェブマガジン
役立つ情報やコミュニティのニュースやブログ記事などを載せていきます。
JOY TO WORKS トップに戻る