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気づけばそこにある"見えない境界"

ハタラクの壁

第3回|「ひとり親の壁」——就労と子育ての両立困難



日本のひとり親世帯は就業率が約8割と高く、働く意欲の強さが際立っています。ところがその半数以上が非正規雇用にとどまり、賃金水準も低いのが現実です。つまり「働いているのに生活が安定しない」――これが「ひとり親の壁」です。しかも多くは30〜40代の働き盛り。社会にとっては即戦力であるはずの人材が、環境の制約と制度の枠組みによって「労働弱者」として扱われてしまう矛盾があります。
【壁の定義】働き盛りが“弱者”に分類される矛盾
「ひとり親の壁」とは、働く意欲や能力があっても、子育てとの両立が正規雇用の前提条件と噛み合わず、安定した雇用や十分な賃金に結びつかない状況を指します。

ここで注目すべきは、当事者の多くが30〜40代の働き盛りだということです。社会にとっては経験もスキルも豊富で、本来ならば組織の中核を担える層。しかし現実には、勤務時間や突発的な休みに対応できないことで「戦力外」と見なされ、非正規雇用や低賃金労働に押し込まれてしまいます。

この矛盾は、本人にとっては「力を持ちながら報われない」苦しみとなり、企業にとっても「戦力を活かせない歯痒さ」として跳ね返ってきます。働き盛りの世代を自信を持って戦力として扱うことができない制度や環境は、社会全体にとっても大きな損失です。人材不足が深刻化する今、その力を生かせない構造こそが“見えない壁”となって立ちはだかっているのです。
【なぜ超えられないのか】本人と企業、双方の合理がすれ違う
両立制約が壁になるのは、正社員制度が長時間労働や即応性を前提に設計されているためです。突発的な欠勤や早退は代替要員の不在と直結し、現場にとって「ラインを止めるリスク」として映ります。

キャリアの断絶が評価されにくいのは、日本企業の人事慣行が「成果」よりも「継続性」と「可用性」を重んじるからです。ブランクや短時間勤務は「今すぐフルに働けない」とみなされ、専門性が軽視されてしまいます。

さらに、企業が柔軟な制度を理解しつつ実行に踏み込めないのは、コストと短期KPIの壁です。シフト再設計や代替要員確保には即コストが発生しますが、効果(離職防止や生産性向上)は時間が経たないと見えにくい。企業は「正しい」と分かっていても、目の前の責任と不確実性の狭間で立ち止まってしまうのです。
【どうすれば超えられるのか】設計を変え、社会で支える
企業はまず、業務を成果単位に切り分け、短時間や在宅でも担える役割を明文化することから始められます。評価軸も在席時間ではなく成果やエラー率に切り替えることで、制約ある人材も戦力化できます。小規模チームで試し、効果を数値で示せば投資判断も可能になります。

本人は、自治体の母子・父子自立支援員や職業訓練を活用し、「できること」を証明できるスキルや資格を得て、制約を“リスク”から“条件”に変えていく必要があります。

そして第三者の存在が不可欠です。
🌐 しんぐるまざーず・ふぉーらむ(就労・生活支援)
🌐 キッズドア(教育格差是正)
🌐 全国母子寡婦福祉団体協議会(地域相談ネットワーク)

こうした団体の伴走があって初めて、「家庭か仕事か」の二者択一を崩せます。JOY TO WORKSも短時間・限定業務のマッチングで、孤立を防ぎながら継続就労を支える役割を果たします。
【まとめ】この壁の突破は企業にとって飛躍へのカギ
ひとり親の世代は本来、社会の中核を担う力と使命を持っています。にもかかわらず、制度や環境が噛み合わないために、その力を十分に活かせず、活躍の場さえ与えられない状況が続いています。確かにこれは社会設計の問題でもありますが、同時に企業の取り組み次第で変えられる現実でもあります。業務設計や評価軸を見直し、第三者支援と連携すれば、この大切な戦力を存分に活かすことができるのです。そしてそれは、企業にとっても人材不足を打破し、未来の成長へとつながる飛躍のカギになります。
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