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気づけばそこにある"見えない境界"

ハタラクの壁

第4回|「シニア雇用の壁」——年齢で区切られる働き方の現実



60歳を迎えた瞬間、同じ会社で同じ仕事をしているのに、肩書も待遇も変わってしまう。
昨日まで頼られていたベテランが、今日から「再雇用の非正規」と呼ばれる。
「まだやれる」と感じている人ほど、その落差に戸惑います。

人材不足が深刻化する社会で、経験豊かなシニアの力を活かせないのは、本人にとっても企業にとっても損失です。
なぜこの「シニア雇用の壁」は崩れないのでしょうか。
【壁の定義】年齢という数字がキャリアを断ち切る
多くの企業では定年を60歳とし、65歳までの雇用確保を義務として整備しています。さらに70歳までの就業機会確保は「努力義務」とされていますが、現場に浸透しているとは言い難いのが実情です。

現実には、60歳を超えると給与が大幅に下がり、役職も外れるケースが多い。能力や意欲が十分にあるにもかかわらず、「年齢」というただの数字で線が引かれてしまうのです。
なぜそんな割り切りが行われるのか。理由はシンプルです。

企業の人件費テーブルは年齢や勤続年数を前提に設計されており、60歳以降も従来の給与を払い続ければ人件費構造が持たない。さらに健康リスクや突発的な休養の可能性は、企業にとって「年齢」で推し量るしかないリスク要因です。評価制度も年功序列を前提に作られてきたため、60歳を超える働き方を正しく測る仕組みがありません。
つまり、「年齢だけで区切られる」ように見えるのは、冷酷な差別ではなく、制度設計の都合なのです。
【なぜ超えられないのか】双方の合理が衝突する
シニア雇用をめぐる課題は、本人と企業、それぞれの「合理」がぶつかるところにあります。

【企業の合理】
人件費の抑制、若手登用の必要、短期KPIへの責任。仕組みを変えたい気持ちはあっても、既存の給与制度や組織バランスを壊すリスクを負いきれない。

【本人の合理】
長年培った知識や技術を社会に活かしたい。生活費を支えるためにも働き続けたい。しかし待遇が半減すれば意欲は削がれ、「必要とされていない」と感じてしまう。

【制度の固定化】
60歳、65歳という数字が「常識」として根付いており、企業も本人も「仕方がない」と受け入れざるを得ない。

双方とも正しく、努力もしている。それでも壁は立ちはだかります。ここに「シニア雇用の壁」の本質があります。
【最新データで見る現実】就業率は高いのに、待遇は低いまま
総務省「労働力調査」によれば、65歳以上の就業率は上昇を続け、2023年には25%を超えています。世界的に見ても日本は突出しています。

しかし、その内訳をみると非正規雇用が中心で、時間単価は若年層の半分程度。責任あるポジションにつく割合も少なく、企業の中核として活躍しているシニアはわずかです。
つまり「働いている人の数」は増えても、「待遇や役割の質」が伴っていないのです。
【本人にできること】「働きたい」から「こう貢献できる」へ
企業にも合理的な事情がある以上、シニア層も「働かせてほしい」と訴えるだけでは不十分、というのが現実です。自らの経験や知識を、よりいっそう企業が求める形に変えて提示することが求められます。たとえば、

📑 職務経歴書に加えて、自分の経験を整理した「知識・経験マップ」を作る
📘 過去の知識をマニュアル化し、面接時に「新人教育に使えます」と提示する
🛠️ 実際の業務改善案や研修プランを文書にして持ち込む
🗓️ 「週3日勤務なら可能」「午前中だけなら確実に出社できる」といった条件を事前に整理し、交渉材料にする

などなど、長年の経験と知見という武器を「見えやすいようにする」ことは、「演出的」と思われがちですが非常に有効な戦略です。こうした準備は「即戦力であり、制約を見越しても任せやすい」と企業に伝わります。企業が「今こそ、この人に頼りたい」と感じさえすれば、この壁は意外と容易に超えられるものです。
【第三者の橋渡し】頼れる機関と団体
企業と本人だけでは埋められない溝を、第三者がつなぎます。

🌐 ハローワーク「生涯現役支援窓口」(60歳以上向けの総合就労支援/相談・職業紹介・セミナーなど)
厚生労働省
🌐 全国シルバー人材センター事業協会(地域での短期・臨時就業機会の提供/各センター検索はこちら)
全国シルバー人材センター事業協会
🌐 JEED「高齢者の方へ」(再就職・職業能力開発・セカンドキャリア情報の公的ポータル)

JOY TO WORKSも、短時間・専門特化の業務を企業に橋渡しし、シニアが力を発揮できる場を広げます。
【まとめ】「壁」を越えることは社会の損失を利益に変えること
シニア雇用は負担になり得ますが、同時に大きな可能性でもあります。企業は制度や慣習に縛られながらも、工夫次第でメリットを引き出せます。本人は「働きたい」という気持ちを「こう役立てる」という形に変えることが求められます。そして第三者がその間を橋渡しすることで、壁は現実的に超えられるものになります。

シニアは余力ではなく、社会を支える現役戦力です。
その力をどう使うかは、企業にとっても未来の飛躍を左右する経営課題です。
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